ゼロボルトを出力する電源

ゼロボルトを出力する電源

著者:佐藤 隆之

電源回路は色々な場面で使用される非常に重要な回路です。出力電圧は固定で使用される場合が多いですが、電圧可変が求められる用途もあります。例えばラボ用電源は出力電圧が可変できる代表的な応用です。今回は出力電圧を変化させる場合の課題とその解決方法を見て行きます。最後に電流の向きに関する注意点についても触れていきます。

一般的な電源回路構成

1LTC3026の回路構成を示しています。この構成は非常に多くの場面で使用され、動作としては抵抗分圧器で出力電圧Voutを分圧してから基準電圧(この例では0.4V)と比較することにより出力電圧を安定化しています。

図1. LTC3026の回路構成

抵抗分圧器の比率を変えて出力電圧を可変させます。分圧比を大きくすれば理論的には出力電圧を大きくできますが、逆に下げる場合はどうなるでしょうか。実はこの方法で出力電圧を基準電圧以下にすることはできず、分圧比が1の時に出力可能な最低電圧である基準電圧と同じ電圧になります。出力電圧を変化させるために分圧比を変えることは、言い換えると帰還率を変化させることになりますので負帰還ループ特性も変化する事を意味します。程度問題ではありますが、電源としての応答特性が出力電圧値により異なる結果になります。

特性改良された回路構成

2LT3045の回路構成になります。動作としては基準電圧(ここではSET-pin電圧)をバッファして出力電圧としており、従来の抵抗分圧器を用いておりません。

PGFBピンに接続されている抵抗分圧器は、出力電圧設定用ではない事に注意してください

内蔵の定電流源x外付け抵抗が出力電圧になりますので、従来の様な基準電圧で決定される最低出力電圧という概念はありません。基準電圧をゼロボルトにすれば出力電圧もゼロにすることが可能であり、抵抗値に比例した出力電圧が得られるので出力設定がとても簡単になります。DACを接続すれば電圧制御電圧源とする事も可能です。負帰還ループとしては常に帰還率が1として動作していますので、出力電圧を変化させても動作原理上電源としての応答特性に変化はありません。

図2. LT3045の回路構成

リニア方式とスイッチング方式

ここまでに説明した回路例は全てリニアレギュレータ構成になっているため、出力電流が多くなると電力損失が問題になる場合がありますので応用範囲が狭まってしまいます。基本コンセプトはそのままで、スイッチング方式にした電源もいくつかご用意しています。一例として、図3にスイッチング方式のLTC3649の回路構成を示します。ISETピン電圧をバッファして出力電圧としていますので、このピンをゼロボルトにすればリニア方式と同様にゼロボルトを出力できます。

図3. LTC3649の回路構成

電流の向きに関する注意点

ゼロボルト付近まで出力できる電源についてお話ししましたが、基本的には電流方向は出力(Source)のみで吸い込むこと(Sink)はできません。スイッチング方式で出力電圧をゼロボルトまで出せる電源で電流を吸い込む(Sink)事も可能なデバイスも実は存在しておりLTC3623(4)になります。Sink, Sourceの両方ができるので応用範囲が広がります。

図4. LTC3623の回路構成

まとめ

ゼロボルトまで出力可能な電源としては、リニア方式とスイッチング方式の2種類あり、必要な電流容量により選択可能です。出力電圧の変更も簡単にできるので可変電圧源をお探しの場合は是非お試しください。