より現場の近くに

より現場の近くに

著者:Conal Watterson、Brian Condell

多くの場合、入力/出力モジュール(IOモジュール)は、フィールド・デバイスから離れた場所にある制御キャビネット内のローカルのPLC(Programmable Logic Controller)に接続されます。そのため、IOモジュールはローカルIOモジュールと呼ばれることがよくあります。スマート・マニュファクチャリングの分野には様々なトレンドがあります。その1つに、PLCにより多くのIOモジュールを接続するのではなく、より現場の近くに配備すべきだというものがあります。実際、多くの製造企業は、センサーやアクチュエータといったフィールド・デバイスの近くにIOモジュールを直接接続するようになってきているのです。言い換えれば、ローカルIOモジュールではなく、リモートIOモジュールの利用が増えているということです。本稿は、このブログ・シリーズの1回目の記事です。今回は、リモートIOモジュールを使用することで得られるメリットについて説明します。リモートIOモジュールは、製造の柔軟性を高めるために広く採用されるようになっています。本稿の後半では、この動きに影響を与えている主要なトレンドについて解説します。

リモートIOモジュールを使用する理由

製造企業は、なぜスマート・ファクトリにおいてローカルIOモジュールよりもリモートIOモジュールを使用したいと考えているのでしょうか。以下、その多くの理由のうち、主なものについて解説します。

  • 配線の数を減らせる、センサーまでの距離が短くなる: 4~20mAの電流ループとデジタルIOをリモートIOモジュールに接続したとします。ローカルIOモジュールを使用する場合、マーシャリング・キャビネットを介してPLCに接続するためのケーブルの束が必要になります。リモートIOユニットを採用すれば、それらのケーブルが不要になります。わずか1本のケーブル(100Mbpsのイーサネットやフィールドバスなどに対応)のセグメントによって、制御キャビネットとリモートIOモジュールの間が直接デイジーチェーン接続されるからです。フィールド・デバイス(エッジ・ノード)からマーシャリング・キャビネットを介して制御キャビネットやPLCまでを接続するためには、それぞれ最長1kmにも及ぶ多数のケーブル配線が必要になります。それらが不要になれば、配線の敷設に伴う時間とコストを削減できます。

ここで、以下の図をご覧ください。

リモートIOモジュールを採用すれば、設置に必要なコストが削減され(配線に加えて、必要なケーブル・トレイも少なくなります)、必要な時間も短縮されます。また、障害点の数も減少することになるので、トラブルシューティングの作業が簡素化されます。将来のプロジェクトにおいて拡張が必要になった場合にも、リモートIO用のエンクロージャの中にIOカードを追加するだけで済みます(制御室のPLCまでの配線を追加する必要はありません)。

  • 制御の簡素化: リモートIOモジュールを採用すれば、PLCを個々のデバイスの横に配置するのと同じ効果が得られます。様々な場所にあるリモートIOモジュールを1台のPLCに接続することが可能です。
  • 既存のノードをイーサネットに接続可能: プロセス業界や多くの製造フロアでは、設備全体を改修することなく、単に追加するだけで変化に対応可能なオートメーション・システムが確立されています。それと同時に、新たな制御システムは、イーサネットをベースとする接続性を活用し、より大量のデータをリアルタイムかつ確実に処理できるようになっています。新たなリモートIOモジュールを配備すれば、4~20mAの電流ループで接続されているものをはじめ、既存のフィールド・デバイスを産業用イーサネットのネットワークに接続することが可能になります。
  • 過酷な環境における制御:アプリケーションによっては、環境が過酷であることから、ローカルIOモジュールが接続されたPLCをフィールド・デバイスの近くに配置できないことがあります。それに対し、リモートIOモジュールは、PLCと比べて過酷な環境に対する堅牢性と耐久性がはるかに高い可能性があります。

リモートIOモジュールの普及を促進する最新のトレンド

リモートIOモジュールは数年前から存在しています。その頃とは異なり、最近ではどのようなリモートIOモジュールでもよいというわけではなくなっています。製造企業に更なるメリットをもたらす次世代のモジュールに対する需要が高まっているということです。その背景には、以下のようなトレンドがあります。

  • デジタル化: 製造フロアのセンサーを介して得られる知見に、ユーザがシームレスにアクセスできるようにしなければなりません。これは、更に多くのデータを伝送しなければならないということを意味します。一部のデータの取得/伝送については、デタミニスティックな通信やリアルタイムの制御が必要になるので、イーサネットへの移行とマルチプロトコルのサポートが求められます。
  • アジャイルなオートメーション:製造企業は、消費者の行動や需要に応じて変化する要件に素早く容易に適応できるフレキシブルなシステムを必要としています。大量生産や予測が可能な需要を対象として設計された固定的かつ大規模なシステムでは、そのような条件を満たせません。そうではなく、最小限のダウンタイムと設備投資によって素早く再構成することが可能なフレキシブルなシステムが求められています。
  • 最適化: インダストリ4.0にはいくつかの重要な課題が存在します。例えば、より高密度のフォーム・ファクタを使用することで、配線の削減、トラブルシューティングの簡素化、設置時間の短縮を実現できるようにする必要があります。
  • 信頼性:製造企業は、最終的な機器の最大限のアップタイムを確保したいと考えています。そうした企業にとっては、電磁環境適合性(EMC)を含む信頼性を高めることが重要な要件になります。
  • セキュリティ: EUサイバー・レジリエンス法(European Cyber Resilience Act)に代表される法規制の変化は、製造企業に大きな負担をもたらします。例えば、オートメーション機器/モジュールに対し、セキュリティを確実に確保するためのハードウェア・ベースの手法を適用することが求められます。

このブログ・シリーズでは、次回以降、次世代のリモートIOモジュールがもたらす主なメリットについて説明します。ファクトリ・オートメーションの分野には、リモートIOモジュールの市場を牽引する成長トレンドが存在します。製造企業がそれに対応できるようにするために、アナログ・デバイセズは技術的な支援を行っています。次回以降、その貢献内容についても解説することにします。第2回の記事は、こちらからご覧ください。

参考資料