産業用のモバイル・ロボット - 未来の工場に向けた今日の変革

産業用のモバイル・ロボット - 未来の工場に向けた今日の変革

著者:Anders Frederiksen、Margaret Naughton

作業の自動化は、私たちの生活のあらゆる場面で当たり前のことになりつつあります。例えば、近頃は近所の人が芝刈りをしている場面を見かける機会が減りました。その代わりに、ロボット芝刈り機が庭をせっせと動き回り、芝を刈り取っている姿を目にします。これは、モバイル・ロボットによる自動化が人間を反復作業から解放した一例です。確かに、芝刈りをしなくて済むのは喜ばしいことです。しかし、モバイル・ロボットとそれによる作業の自動化が真価を発揮する場所は工場や倉庫です。製造施設の中で材料やアセットを絶えず移動させる必要がある場合、モバイル・ロボットによって顕著な効果が得られます。

自律走行ロボット(AMR:Autonomous Mobile Robot)や無人搬送車(AGV:Automated Guided Vehicle)は、生産/製造プロセスの様々な個所をつなぎ合わせることを可能にします。それらは人間や他の機械の仲介役として機能し、ある設備から別の設備への円滑な引き継ぎを実現します。

 . Illustration of a busy warehouse with workers engaged in various tasks, showcasing a dynamic work environment.

「なぜモバイル・ロボットは、いま、より大きなインパクトを与えているのか?」との疑問を覚える方もいらっしゃるかもしれません。ただ、その答えは簡単です。1つ目の理由は、最新のロボットの知覚力が著しく向上したからです。データに基づいて生成される洞察は、自動化に関する今日の変革において大きな役割を担っています。真のセンサー・フュージョンにより、3D ToF(Time of Flight)カメラ、慣性計測ユニット(IMU:Inertial Measurement Unit)、LiDARといった多くのシステムからのデータを収集/処理できるようになりました。それにより、ロボットの周囲の情報をリアルタイムに認識することが可能になりました。その結果、工場の環境と製造フロアにおけるロボットの位置をシームレスにマッピングできるようになりました。

2つ目の理由は、最近のモバイル・ロボットの効率の高さです。例えば、モバイル・ロボットのリアルタイムの認識能力が高まると、動作の自由度が向上し、動的に変化する環境内でもスムーズに移動できるようになります。倉庫や工場に自動化を導入するためには、モバイル・ロボットの力を利用することが不可欠です。それにより、効率の向上、在庫の管理、業務のスピードアップが可能になります。大規模な倉庫では、モバイル・ロボットによって装置や製品のスキャン、位置の特定、移動を実現します。それにより、在庫の管理や移動の効率を高められます。その結果、小売店やオンライン・ショッピングの需要に応える24時間365日の稼働が保証されます。また、完全に自動化された工場であれば、通常は人間が作業を行うことがないような低温/低照度の条件下でも稼働できます。ロボットは、そのような過酷な条件を気にしないからです。このことも重要な要素です。

加えて、動きの予測が可能であることには、安全性を確保できるという更なる利点が伴います。モバイル・ロボットに資材を搬送させれば、効率の向上を図れるだけでなく、特定の作業に伴う危険性を排除できる可能性があります。例えば、人がフォークリフトを操作する場合、その人あるいはその場にいる他の人が負傷してしまうおそれがあります。なぜなら、人が操作するフォークリフトの動作はプログラムされた予測可能なものとは異なるからです。それに対し、モバイル・ロボットは常にA地点からB地点まで最も効率良く移動できる方法を選択してゆっくりと移動します。万が一、事故が発生した場合でも、そこに人がいて負傷してしまうことはありません。また、一部の作業には危険物の扱いや危険な装置とのやり取りが伴います。しかし、資材の搬送や動きを伴う大型装置への接近を任されているモバイル・ロボットにとって、そうした危険性は問題にはなりません。この点が、人間がその種の作業を行う場合と大きく異なります。

モバイル・ロボットが急速に台頭してきた3つ目の理由としては、それらのロボットの柔軟性の高さが挙げられます。ここで言う柔軟性の高さとは、プロセスのニーズに応じて新しいタスクをプログラムできることを指します。例えば、バッチサイズが1の製造施設はカスタマイズされたプロセスに対応する必要があります。そのためには、適応力のあるモバイル・ロボットが不可欠です。ドライバを開発するための強力なツールであるROS(Robot Operating System)は、多くの人や企業がロボットの開発に乗り出すことを可能にしました。ROSをベースとし、モバイル・ロボットが人間のように動作して作業をこなすためのアルゴリズムが次々に開発されています。現在は、標準化やコラボレーションが推進され、産業界におけるデジタル・トランスフォーメーションが進行している状況にあります。そのため、ロボット工学の分野で活躍するというのは非常に魅力的な選択肢になるでしょう。モバイル・ロボットも、特定の場所に据えつけられるロボットも、従来にはないレベルで、環境について把握し、相互に作用し、情報を交換できるようになるはずです。

モバイル・ロボットの導入は、よりインテリジェントなエッジ、改善されたバッテリ管理(バッテリ・マネージメント)手法、シームレスに接続された工場によって支えられています。多様な作業の中には、自動化が容易なものと困難なものがあります。産業用のモバイル・ロボットが扱うのはより複雑な作業であり、作業環境の条件もより厳しくなります。そのため、よりインテリジェントなモバイル・ロボットを開発することが重要です。それを実現できるか否かが、高度に自動化された製造環境にモバイル・ロボットをシームレスに導入するための鍵になります。詳細については、analog.com/jp/mobile-roboticsをご覧ください。