著者:Michael Jackson、Brian Condell
この連載では、スマート・ファクトリに関連する話題を取り上げ、その概要を説明してきました。今回はその最終回として、IO-LinkTMデバイス・トランシーバーを選定する際に検討すべき事柄について説明します。最良のIO-Linkデバイス・トランシーバーとは、どのようなものでしょうか。それは、対象とするアプリケーションの要件に最も近い機能/性能を備えるものです。アナログ・デバイセズは、その選択肢となるIO-Linkデバイス・トランシーバー製品を数多く提供しています。当社の専門知識を活かせば、それらの中から個々のアプリケーションに最適な製品を選択することができます。なお、前回の記事はこちらからご覧ください。
コネクタ・ピンの機能
IO-Linkデバイス・トランシーバーを選定する際に最初に検討すべきことは、それがサポートするコネクタ・ピンの機能の数と種類です。スマート・ファクトリ向けのIO-Linkデバイス(IO-Linkに対応するセンサーやアクチュエータ)の中には、データの伝送やスイッチングにC/Qピンしか必要としないものがあります。「MAX22514」は、まさにそのような仕様に合致する製品です。しかし、追加のデジタル入力(DIN)のようなIO-Linkの接続を必要とするデバイスも少なくありません。その目的は、基本的なセンサーやプッシュボタン・スイッチからの信号を伝送することです。そのようなデバイスには「MAX22515」の方が適しています。更には、DINをデジタル出力(DO)としても構成できることが求められるデバイスも存在します。そのようなデバイスに対しては、「MAX22513」のような自由度の高い製品が最適です。
図1. IO-Linkデバイス・トランシーバーのポート・ピンの機能
小さなフォーム・ファクタ
産業分野では、オペレーションを高度に自動化する動きが進んでいます。それに伴い、工場の製造フロアでは多くの設備が密集する状況になりました。結果として、IO-Linkに対応するセンサーやアクチュエータにもより一層の小型化が求められています。そのため、IO-Linkデバイス・トランシーバーのパッケージ・サイズも重要な要素になります。非常に小さな筐体に収まるようにIO-Linkデバイスを設計するのは容易なことではありません。2.5 × 2mmのWLCSPを採用しているMAX22515であれば、この課題の解消に貢献できます。
高い集積度、少ない放熱量
センサーやアクチュエータの筐体の小型化は意図せぬ影響をもたらします。それは、発熱という形で消費電力がより大きな問題になるというものです。一般に、IO-LinkデバイスはIO-Linkマスタから電力を得ます(24Vの電源が供給される)。ただ、IO-Linkデバイスの動作には、デジタル領域の低いレベルの電圧(3~5V)しか必要ありません。つまり、24Vからそのレベルまでの降圧が必要になり、それに伴って多くの電力が無駄になる可能性があります。従来は降圧用に外付けのDC/DCコンバータを使用していましたが、そうすると追加の部品によって実装面積が増大します。この問題を解決するのが、高効率かつ完全集積型のDC/DCコンバータを内蔵するIO-Linkデバイス・トランシーバーです。例えば、MAX22513は、出力抵抗の小さい(代表値は2Ω)ドライバから最大300mAの電流を供給することができます。MAX22514の場合、同2.4Ωのドライバから最大200mAの電流を供給することが可能です。
図2. DC/DCコンバータを内蔵するMAX22513を採用することの効果。筐体の断面図を見比べれば、スペースを大幅に節約できることがわかります。
また、通信リンクの管理はIO-Linkデバイスのマイクロコントローラが担います。ここで、IO-Linkデバイス・トランシーバーが発振器を内蔵していれば、それをコントローラ用のクロック源としても利用できます。その場合、部品点数を削減し、実装スペースを縮小することが可能になります。MAX22513とMAX22514は、いずれも発振器を内蔵する製品です。
堅牢性の確保
工場の製造フロアは非常に過酷な環境です。過渡的なサージや静電放電(ESD)に対する適切な保護を適用しなければ、繊細なICは簡単に破損してしまう可能性があります。アナログ・デバイセズのIO-Linkデバイス・トランシーバーの場合、ケーブルとのインターフェース用に±60Vに対応する保護機能が適用されています。それにより、産業環境で遭遇する状況に耐えられるだけの堅牢性を確保しています。加えて、電流制限の機能とスルー・レートの調整機能を備えるトランスミッタによって、最適な電磁環境適合性(EMC)も実現されます。
LEDドライバ
アプリケーションによっては、IO-Linkデバイス・トランシーバーにより、状態表示用の外付けLEDを駆動できるようにすることが求められます。この機能を備える製品としては「MAX14827A」と「MAX14828」が挙げられます。
図3. MAX14827AによるLEDの駆動
通信/制御インターフェース
IO-Linkデバイスのマイクロコントローラは、通信/制御用に様々な種類のインターフェースを採用している可能性があります。そこで最大限の柔軟性が得られるようにするために、アナログ・デバイセズのIO-Linkデバイス・トランシーバーは複数種のインターフェースに対応するように設計されています。その例を以下に示します。
まとめ
この連載では、スマート・ファクトリについて解説してきました。IO-Linkは、スマート・ファクトリの概念を具現化するために用いられる汎用インターフェースです。単一のケーブルを使って信号と電力の両方を伝送できるので、スマート・センサーやアクチュエータとの通信が簡素化されます。産業分野では、より多くのオートメーション・システムが相互に接続され、よりインテリジェントなシステムが構築/運用されるようになりました。その結果、制御の集中化と生産の最適化に対する要求に対応するためのものとして、IO-Linkはより重要な技術となりました。図4は、アナログ・デバイセズが提供するIO-Linkデバイス・トランシーバー製品の機能についてまとめたものです。
図4. アナログ・デバイセズが提供するIO-Linkデバイス・トランシーバー