High Bandwidth Memory(HBM)の電源回路設計課題の最適解とは?

High Bandwidth Memory(HBM)の電源回路設計課題の最適解とは?

著者:戸上晃史郎

現代のAIアクセラレータやデータセンターにおいて、High Bandwidth Memory(広帯域メモリ、HBM)の採用は不可欠です。HBMは、従来のDRAMに比べて大幅に高いデータ転送速度と帯域幅を提供し、AIモデルのトレーニングや高性能コンピューティング(HPC)において重要な役割を果たしています。しかし、その性能を最大限に引き出すためには、非常に高い電流が必要となります。

HBMの課題:高電流要件

HBMは、複数のメモリチップを垂直に積層し、インターポーザと呼ばれる基板上で接続することで、高速で大容量のデータ転送を実現します。この構造により、HBMは従来のメモリ技術に比べて大幅に高い帯域幅を提供しますが、その代償として、100Aを超えて非常に高い電流が必要となります。この高電流要件は、電源設計や冷却システムにとって大きな課題となります。

LTM4681:最適なソリューション

このような高電流要件に対応するために、Analog DevicesLTM4681が最適なソリューションとなります。LTM4681は、デジタル電源システム管理機能を備えたクワッド31.25Aまたはシングル125AμModuleレギュレータです。広い入力電圧範囲(4.5V16V)と出力電圧範囲(0.5V3.3V)を持ち、温度変化に対する最大DC出力誤差は±0.5%です。

LTM4681は、PMBusを介した遠隔設定および監視が可能で、デジタル・プログラマブル・アナログ制御ループ、高精度ミックスド・シグナル回路、EEPROM、パワーMOSFET、インダクタなどで構成されています。これにより、HBMの高電流要件を満たしつつ、効率的な電源供給を実現します。

さらに、LTM4681は高効率であり、電力損失を最小限に抑えることができます。これにより、データセンターやAIアクセラレータの運用コストを削減し、システムの信頼性を向上させることができます。

1: DC3082A-C  4つのLTM4681を使い、480Aを供給する評価ボード

LTM4681の概要

LTM4681は、以下のような特長を持っています:

  • 高電流供給能力:クワッド31.25Aまたはシングル125Aの出力が可能で、HBMの高電流要件に対応。
  • 広い入力電圧範囲:4.5Vから16Vまでの入力電圧に対応し、柔軟な電源設計が可能。
  • 高精度出力:温度変化に対する最大DC出力誤差は±0.5%で、安定した電力供給を実現。
  • デジタル電源システム管理(DPSM):PMBusを介した遠隔設定および監視が可能で、システムの管理が容易。特に、100A以上の高電流を供給する場合、発熱によるトラブルが予想されますが、デジタル電源システム管理により、リアルタイムでの電流・電圧・温度の監視と調整が可能です。これにより、発熱の管理が容易になり、システムの安定性と信頼性が向上します。
  • 高効率設計:LTM4681は高効率な電源変換を実現するために、最新のパワーMOSFET技術とインダクタを内蔵し、最適化されたスイッチング周波数を採用しています。電力損失を最小限に抑え、システム全体の効率を向上させます。さらに、効率的な熱設計により、発熱を抑制し、冷却システムの負担を軽減します。これにより、データセンターやAIアクセラレータの運用コストを削減し、システムの信頼性を向上させることができます。

これらの特長により、LTM4681HBMの高電流要件を満たすための最適なソリューションとなります。

図2. LTM4681熱強化型低プロファイル330ピン(15mm × 22mm × 8.17mm)BGAパッケージ。これひとつで125Aを供給する。

結論

HBMの高電流要件は、AIアクセラレータやデータセンターにおける重要な課題ですが、Analog DevicesLTM4681はその課題を解決する最適なソリューションです。LTM4681の高効率な電源供給により、HBMの性能を最大限に引き出し、次世代のデータ処理を支えることができます。